エンジニアブーツとは元々、工場などで働く技術者が履いていた安全靴です。
乗馬用の靴、丈が長くシューレースの代わりに甲と太もも部分に付けたベルトで調節できる、
いわゆるライディングブーツが元となっていると言われている説、
または労働者が機械に靴紐が巻き込まれてしまうことや引っかかってしまうことを防ぐため、
ベルトで調節するように変化していったとも言われています。
古いエンジニアブーツの多くが太い筒部分をもっているのは、パンツの裾がブーツの中にしまえ、
作業の安全性を高めるためと考えられています。

機能的な安全性とは別に、マテリアル面での安全性も追及され、
ほとんどの古いエンジニアブーツには、固く分厚い屈強な革で足をしっかりと保護し、
更には足全体を守るための長めの丈や、つま先を守るために鉄製のカバーを付いていたりと、
当時のエンジニアブーツはとにかく足を守るための工夫がされています。

このような特徴からのちにバイカー向けのブーツとして普及し、
日本では早くからバイカーファッションが注目され、バイクに乗らない人々にもエンジニアブーツが認知されたことにより、
タフでハードなエンジニアブーツは長く愛用されてきました。

しかし私は日常靴として使うには、古くから使われているエンジニアブーツに大きな不満を持っていました。
元々安全性、作業性を高めるために誰にでも履きやすいように設計されたエンジニアブーツは、
足首や踵、甲に余裕がある場合が多く、更にはレースアップブーツ程にはそれを調節することができない為、
脱ぎ履きは楽でも、1日数千歩は歩く日常靴としては、その余裕が重量を感じたり幾度もの靴擦れを招いたりすることによって、スムーズに歩くことができず不快感を感じさせることが多々あったからです。

足の形は同じサイズを履く人でもそれぞれ違います。
これはプルオンタイプブーツの宿命ですが、多くの人が快適に足入れ出来るよう設計すると、
余裕がありすぎる人には快適に歩くことができない靴になってしまいます。



そこで以前の記事にも書いたコンセプトに基づいた、タフだけどモダンで履きやすいエンジニアブーツを作りました。
足首は適度に細く、踵も少し細めに、そして甲は低め。
最初の足入れは少し手間取るかもしれません、しかしその部分を通ってしまえばつま先にかけては少し余裕があるはずです。
細めの踵と低い甲によって足はしっかりとホールドされ、最初は少し窮屈に感じるかもしれません。
しかし使用している革には柔軟性があり、新品時と10数回履いた後ではフィット感が違うはずです。
靴に自然な丸みが出て、足を包み込むようなフィット感を生んでくれるでしょう。

あまりにも甲が高い人、足首が太い人には窮屈すぎるかもしれません。
しかし全ての人が履けるように構築すると別の多くの人にとって快適ではないエンジニアブーツになってしまいます。

ぜひ履くたびに足に馴染み、見た目からは想像できない快適な履き心地のエンジニアブーツを体験してみてください。


ADDICT BOOTS
Satoshi Ishijima



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